中国の糖尿病薬市場を狙え 患者、米の4倍 製薬会社熱視線
2012.11.26

中国・天津愛民減肥病院の糖尿病患者=中国・天津市(AP)【拡大】
欧米の製薬会社が、中国の糖尿病治療薬市場への関心を高めている。運動不足と過剰なカロリー摂取に関連した2型糖尿病の患者数が過去10年で3倍強に増加し、市場は2016年までに200億元規模(約2646億円)に拡大するとみられている。割高だが、血糖値上昇や心臓まひ・発作といった合併症を避ける新しい医薬品への需要も高まっており、製薬業界にとっては巨大市場となる。
ブリュッセルを本部とする国際糖尿病連合(IDF)によれば、中国の糖尿病患者は米国の2370万人のほぼ4倍。30年までに中国の患者数はさらに4000万人増えるという。IDFは、中国では糖尿病関連の年間医療コストが1734億元に上ると試算している。
中国では健康保険制度の利用で、世界中で処方されている糖尿病の主力薬「メトホルミン」は無料で入手できる。だが、医師らは50年前の薬ではなくリスクの少ない新薬に関心を寄せており、学術誌「ダイアビーツ・アンド・メタボリズム」(12年4月号)によると、米製薬大手メルクの「ジャヌビア」などの新薬は血糖値の安定化に役立つとされている。
中国・北京市の阜外心血管病医院で糖尿病部門を率いるリ・ガンウェイ医師は、インスリンの水準を押し上げたり、低血糖を引き起こす可能性のある古い治療薬ではなく、リスクの少ない新薬を利用できれば、患者を効率的に治療できると語る。患者14万人を対象に実施した11年の調査によれば、中国の糖尿病患者の半分余りは、血液中のブドウ糖のコントロールがうまく行えていない。
IMSヘルスのコンサルタント、ヤン・ガオジュン氏(上海在勤)は、より高水準の治療を定めたガイドラインにより、中国の糖尿病治療薬市場は年20%拡大し、16年までに200億元に達すると予測している。
メルクのジャヌビアは09年、中国での使用が認可され、1錠(100mg)約9.6元。同社は現在、ジャヌビアを中国の国家基本医療保険医薬品リスト(NDRL)へ追加するよう申請を行っている。
マッキンゼー・アンド・カンパニーは8月のリポートによると、NDRLに認可されれば広範の利用による売り上げ増が見込めるが、認可されるには通常、5年程度かかるとみられる。大手多国籍製薬会社15社のうち12社は、中国での売り上げの半分以上をNDRL承認薬から得ている。
こうしたなか、中国研究開発製薬企業協会(RDPAC)のジョセフ・チョ代表は、裕福な省のなかには、医薬品に関し独自の助成金を導入しているところもあり、製薬会社による中核都市外への進出を推進していると説明する。
仏製薬会社サノフィの中国事業担当ゼネラルマネジャー、ファブリース・バスキエラ氏は「中国内部にさらに進出する、大きな好機を見いだしている」と語り、同社の糖尿病治療用インスリン「ランタス」が中国市場で17%のシェアを握ると推定する。
デンマーク製薬大手、ノボ・ノルディスクのマッズ・クログスガート・トムセン最高科学責任者(CSO)は、中国は今や日本に代わり、同社にとって米国に次ぐ第2位の市場だと指摘。「中国は年15%の範囲で成長するとみている。中国の抱える問題は深刻だ。米国の糖尿病患者が2600万人に対し、中国では1億人だ」と述べた。(ブルームバーグ Daryl Loo)
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